透析患者さんが注意したい食品と意外な落とし穴
透析患者さんにとって重要な栄養素 1)2)3)
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注1体重は基本的に標準体重(BMI=22)を用いる。
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注2性別、年齢、合併症、身体活動度により異なる。
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注3尿量、身体活動度、体格、栄養状態、透析間体重増加を考慮して適宜調整する。
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※日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」より引用
透析患者さんにとって、特に摂取量に注意したいのは「リン・カリウム・食塩(水分)」です。多く含まれている食品をはじめ、知らないと摂り過ぎてしまう意外な落とし穴、食べ方の工夫などをご紹介します。
リンは、たんぱく質1gに対して約15mg含まれると考えられています。透析患者さんの1日あたりのたんぱく質の摂取基準は「0.9~1.2g/標準体重(kg)」であるため、リンの摂取基準量は下記の式で計算できます5)。
たんぱく質は過不足にならないよう適切な量を摂取する一方で、リンを摂り過ぎないように注意が必要です。
※標準体重は「BMI22kg/m2」を用いる。
- 通食事から摂取するリンには、有機リンと無機リンがあります。有機リンは、主に「①動物性たんぱく質食品に含まれる有機リン」と「②植物性たんぱく質食品に含まれる有機リン」があります。一方「③無機リン」は、食品添加物として加工食品や嗜好飲料に多く含まれています。この3種類のリンはそれぞれ吸収率が異なり、①は40~60%、②は20~40%、③は約100%と考えられています。
- 吸収率が高い無機リンを多く含むハムやソーセージ、インスタント食品などの加工食品、嗜好飲料などの摂取を減らすことが大切です。
- 現代の食生活では、加工食品をまったく食べないことは現実的ではないため、下処理で無機リンを減らしましょう。茹でたり水にさらす方法がおすすめです。
- 同じ動物由来の肉でも、部位によって含まれるリンの量は異なります。調理の際には上手に部位を選びましょう。
カリウムは、果物や野菜、いも類、乾物、きのこ類、種実類、海藻類、豆類に多く含まれています。また野菜ジュースや果汁100%ジュース、牛乳、コーヒーなどの飲み物にも多く、他にも肉や魚などのたんぱく質を多く含む食品も、カリウムの含有量が多くなるため、摂りすぎないように注意が必要です。
- 主食(ごはん)・主菜(肉・魚・卵などのたんぱく質食品)・副菜(野菜中心)を揃えることで、カリウムの過不足を防ぎましょう。一部の食品に偏った食べ方は、高カリウムを招く恐れがあります。
- 野菜は緑黄色野菜ばかりに偏ると、同じ量を摂取していてもカリウムが多くなります。比較的カリウムが少ない淡色野菜も組み合わせましょう。
- 野菜は、細かく切って水に30分以上さらす「水さらし」や、食材を茹でて湯を捨てる「茹でこぼし」などの処理をして、カリウムの量を減らしましょう。
- 果物の摂取は適量にしましょう。カリウム含有量にもよりますが、果物の1日の摂取目安量は50~100g程度です。
食塩を制限することが水分の管理にもつながりますが、低栄養にならず、食欲を低下させないおいしい食事であることが大切です。それぞれの患者さんに合った「適塩」を心がけましょう。
- 日本人は、食塩摂取量の約7割を調味料由来の食塩相当量から摂取しています4)。例えば顆粒だしなど、知らないうちに摂り過ぎることがないよう、まずは調味料の食塩相当量を知りましょう。
- 味を染み込ませると必要以上の食塩を摂ってしまうため、調理の時は下味を付けずに、表面にだけ調味料を付けるのがおすすめです。
- 食塩の少ない調味料や酢、かんきつ類、香り(ごま、しょうが、七味など)を上手に利用しましょう。
- 食塩の多い料理と、食塩の少ない料理を組み合わせると、おいしく適塩にすることができ、メリハリのある献立になります。
- 外食では、「汁物・漬物を抜いてもらう」「ドレッシングは別皿でもらう」などの対応をしてもらうと、塩分量を調整しやすいでしょう。
- 麺類は、塩分と水分の両方に注意が必要です。麺類はつけ汁で食べ、汁は飲まないようにしましょう。
- 水分は、飲料水だけでなく、果物やおかゆ、豆腐などの食品にも含まれているので注意が必要です。
- 「食塩相当量」と「食塩量」は異なるため、栄養表示を確認しましょう。
※出典:日本高血圧学会HP「ナトリウム量と食塩相当量の違い」 https://www.jpnsh.jp/data/salt_cnts002.pdf
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参考文献・HP
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1)小川洋史 岡山ミサ子 宮下美子 監修:透析ハンドブック, 第5版, 医学書院, 2018
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2)上月正博 編著:腎臓リハビリテーション, 第2版, 医歯薬出版, 2018
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3)透析ケア, 第25巻9号, メディカ出版, 2019
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4)日本腎臓学会編, エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン, 東京医学社, 2018
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5)日本透析医学会, 慢性透析患者の食事療法基準, 日本透析医学会雑誌, 47(5), 2014
2023年10月作成
PSV-Z133B