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副甲状腺ホルモン(PTH)とは

副甲状腺ホルモン(PTH)とは?

副甲状腺と副甲状腺ホルモン(PTH)1)

人ののどぼとけの下には、蝶が羽を広げたような形の「甲状腺」という臓器があり、その裏側(背面)に「副甲状腺」という米粒大の臓器があります。副甲状腺は、通常左右に上下2つずつ、合計4つあります。そこから、副甲状腺ホルモン(Parathyroid hormone、略してPTH)というホルモンが分泌されます。

副甲状腺ホルモン(PTH)のはたらき 1)2)

副甲状腺ホルモン(以下、PTH)は、体内のカルシウムのバランスを整えるはたらきがあり、血液中のカルシウム量を調節するためにもっとも重要なホルモンです。食事で摂ったビタミンDを活性型ビタミンDに変え、腸からのカルシウム吸収を高めます。また、低カルシウム血症になった場合は、適正な状態へ戻すためにPTHが多く分泌され、骨中のカルシウムを血中に流します。

副甲状腺そのものに原因がありPTHが過剰に分泌される病気を「原発性副甲状腺機能亢進症」といいます。一方、副甲状腺以外の病気が原因で二次的にPTHが過剰に分泌される病気を「二次性副甲状腺機能亢進症」といい、慢性腎臓病や透析患者さんに多くみられます。

PTH値が 高い 場合 3)4)

1. 二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)が起こりやすくなる

原因と症状

腎臓の機能が低下し、血中のカルシウムやリンの値が高くなると、PTHが多く分泌されます。このPTHの分泌量が過剰になると「二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)」が引き起こされ、骨がもろくなったり、異所性石灰化や動脈硬化などの合併症を招き、予後の悪化につながりやすくなります。

治療法

リン・カルシウム・PTHを目標値に維持できるよう、透析処方の見直しをはじめ、PTHを低下させるため活性型ビタミンD製剤・カルシウム受容体作動薬の投与を行います。また、食事療法やリン吸着薬で、リンを管理します。これらの治療を行ってもPTHが高い場合は、副甲状腺摘出術(PTx)も検討します。

活性型ビタミンD製剤とカルシウム受容体作動薬の特徴

「活性型ビタミンD製剤」は、低カルシウム血症がみられる場合などに用いられますが、PTHを低下させる一方、血中のカルシウムとリンの濃度、さらにCa・P積を上昇させます。「カルシウム受容体作動薬」は、PTHを低下させるとともに、骨からのカルシウムとリンの動員作用が抑制され、血中のカルシウムとリンの濃度が低下します。

予防とケア

  • 血清リンおよびカルシウムのコントロールを最優先し、PTHの上昇を抑えます。
  • 特に心臓や血管など、異所性石灰化の所見がないか確認します。
  • リンを多く含む食品を控えるよう、患者さんに栄養指導を行います。糖尿病や脂質異常症がある患者さんの場合は、糖や脂質の管理も重要です。ただし、過度の食事制限は栄養状態の低下を招くため注意が必要です。

2. 高リン血症に注意する

原因と症状

腎機能が低下し、リンが正常に尿へ排出されないと、血中のリン値が高くなります。
カルシウムと結び付き、血管の石灰化から心筋梗塞などを発症しやすくなります。

治療法

経口リン吸着薬を服用します。さらに、食事のリンを控える食事療法も行います。

予防とケア

肉・魚・卵・乳製品などリンを多く含む食品や、食品添加物としての無機リンを使用している加工食品を控えるよう、患者さんに栄養指導を行います。

PTH値が 低い 場合 4)

透析患者さんは、過剰なPTHの分泌により二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)を合併しやすく、特に長期透析患者さんに多くみられます。しかし反対に、PTHが低い症例も稀ではなく、PTHが低すぎる場合も予後が悪くなることが報告されています5)。 以下の点に留意しながら、患者さんの状態を正確に把握しましょう。

2023年4月作成
PSV-Z127B

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