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パーサビブ
二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)とは

二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)とは 1)2)

腎臓の機能が低下すると、ビタミンDを活性化できなくなり、消化管(腸)からカルシウムを吸収できなくなります。一方リンも、尿の中へ排出されず血中のリン値が高くなります(高リン血症)。この低カルシウム血症や高リン血症の状態が続くと、副甲状腺ホルモン(PTH)が分泌され、骨からカルシウムを摂取して血中に補おうとします。この副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態を「二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)」といい、骨がもろくなる他、異所性石灰化や動脈硬化などの合併症につながります。

二次性副甲状腺機能亢進症が起こるメカニズム ■ 二次性副甲状腺機能亢進症が起こるメカニズム
参考:小川洋史 岡山ミサ子 宮下美子 監修:透析ハンドブック, 第5版, p119, 医学書院, 2018

症状 1)2)

  • 1骨がもろくなることで起こる症状

    ビタミンDには、腸でのカルシウム吸収を助ける働きがあります。しかし腎機能の低下によってビタミンDを活性型ビタミンDに変換できなくなると、腸からカルシウムを吸収する機能が低下します。さらに高リン血症による影響を受けて副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰に分泌されると、カルシウムを骨から摂取して血中に補おうとするため、骨中のカルシウムが不足します。そのため骨代謝が低下してもろくなり、骨折しやすくなります。特に高齢者は、骨粗しょう症の症状が多くみられるため注意が必要です。

  • 2カルシウム沈着による症状

    カルシウムが骨以外の組織や臓器に沈着すると、「異所性石灰化」を起こします。例えば血管に沈着すると、血管壁が硬くなって動脈硬化を起こし、心筋梗塞や脳梗塞などを発症しやすくなります。

  • 3高リン血症による血管の石灰化

    リンが正常に尿へ排出されないと、血中のリン値が高くなります。
    さらにカルシウムと結び付き、「異所性石灰化」を起こします。

治療法 1)2)

透析患者さんにおいては、リン・カルシウム・PTH をトータルで管理することが重要です。
血清リン濃度を3.5~6.0 mg/dL、血清補正カルシウム濃度を8.4~10.0 mg/dL、iPTH を60 pg/mL 以上 240 pg/mL 以下の範囲を目標に、維持するようコントロールします
またSHPTへの変化はCKD(慢性腎臓病)の早期から始まっており、早期発見と状態に応じた適切な治療介入が大切です。

出典/日本透析医学会:慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン. 日本透析医学会雑誌,45(4):301-356, 2012

患者さんができる予防とケア 1)2)

  • 適度な運動を心がける

    体を動かさない状態が続き、骨への物理的な負荷が減少すると、骨の形成が低下し高カルシウム血症につながりやすくなります。日常的に適度な運動を行うことが大切です。

  • リンを多く含む食品を控える

    SHPTに進展しやすい高リン血症を防ぐため、リンを多く含む食品を控えます。リンは肉・魚・卵・乳製品などに多く、また加工食品にも食品添加物(無機リン)として含まれていることが多いため摂りすぎないように指導します。

  • 参考文献

  • 1)小川洋史 岡山ミサ子 宮下美子 監修:透析ハンドブック, 第5版, 医学書院, 2018

  • 2)深川雅史 監修:こんな時どうすれば!? 透析患者の内科管理コンサルタント, 金芳堂, 2017

  • 3)飯田喜俊 椿原美治 編:高齢透析患者治療とケアのための透析療法Q&A, 医歯薬出版, 2014

  • 4)上月正博 編著:腎臓リハビリテーション, 第2版, 医歯薬出版, 2018

2023年4月作成
PSV-Z124B

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