第2回:医師が見たオンライン診療の実際と、今後を見据えたアプローチ

知るシリーズ オンライン診療
オンライン診療の今を知る

オンライン診療の制度が2018年4月に誕生してから2年が経過しました。新型コロナウイルス感染症の流行によって、本制度の普及がますます期待される中、約3年のオンライン診療の実績がある小野内科診療所の小野卓哉先生に、オンライン診療のメリットや問題点、コロナ禍の診療の実際のほか、今後の展望などについて幅広くお話を伺いました。
(インタビュー:2020年6月8日、web会議アプリケーション(アプリ)で実施)

オンライン診療を始めたきっかけをお教えください。

重度の循環器疾患を有する高齢の患者さんから、電車通院が困難になってきた上、診察までの長い待ち時間がつらくなったので、この状況を改善できないかと相談されたことがきっかけとなりました。今後も同様な問題を抱える高齢の患者さんが増えることを考え、2017年夏にオンライン診療を導入しました。

オンライン診療を勧める患者さんの基準や、その際のご苦労はありますか?

小野 先生

何らかの障害があるが在宅診療に至っていない患者さんや、仕事が忙しく通院予定が立てられない患者さんのほか、受診日が変則的になり薬物治療のアドヒアランスが低下している患者さんなどがオンライン診療の対象となると考えています。これらの患者さんは当院にとっては潜在的脱落患者となる可能性が高い患者さんになります。

また、在宅療養中の患者さんでは、訪問看護師や介護士、家族のサポートを受けてオンライン診療を受けることが可能な患者さんです。

高齢の患者さんは、パソコン(PC)、スマートフォン(スマホ)やタブレット端末に対する親和性が低く、オンライン診療を提案しても敬遠されることもあります。最初にオンライン診療を始めた患者さんの場合、開始当初は一般のweb通話アプリを使って診療を行うことを試みましたが、患者さん側が操作できず挫折した経験があります。そこでもっと簡単にオンライン診療ができるシステムを探している時に、現在使っているオンライン診療システムに巡り合いました。システムを公開する前でしたが、開発会社の方が患者さんの自宅に出向き説明していただくことで、ようやくでオンライン診療が可能となりました。オンライン診療を行うには、まず患者さんに情報通信機器の操作に慣れていただく必要があり、特に高齢の患者さんには手厚いサポートが必要です。

オンライン診療のメリットとデメリットはどのような点ですか?

基本的に3ヵ月に1回の対面診療と2回のオンライン診療を組み合わせたものとなります。つまり、長期処方と同様の通院間隔ですが、病状の確認がきめ細かくできることが一番のメリットです。さらに、オンライン診療では、患者さんの顔を見て話をするため患者さんにとって診察を受けている満足感が生まれやすいことも良い点ですね。対面診療では医師は通常PC画面を見ながら患者さんの話を聞くため、患者さんにとっては親身になって自分の訴えを聞いていないように思われるからだと思います。また、電話診療では患者さんは無料の医療相談と誤認識されがちです。

さらに、メリットとして挙げたいのは、画面に映る患者さんのお部屋からその生活ぶりが垣間見られ、患者さんの性格や身体能力を知ることができる点です。これは通院のみの診療では知りえない貴重な情報となります。

一方、デメリットとしては、今の技術では、いわゆる診察情報が極めて限定的になります。例えば医師自身が脈や血圧などの測定を行うことができません。当院が採用しているオンライン診療システムは、スマホと連動した家庭用測定機器から体重や血圧・歩数などのバイタル情報を自動的に取り込むことも可能なため、診察時に参考データとして活用し診療情報の少なさを補足できます。

そのほか、オンライン診療の導入には患者さんがスマホなどを上手に操作できるかどうかが大きく影響してしまう点です。一方、若い世代や普段からスマホなどに慣れている方で、本来は通院可能な患者さんが利便性のみを求めてオンライン診療に切り替わる可能性があることを示唆しています。

今オンライン診療を受けている患者さんの人数や反応はどうですか?

当初は10人弱いましたが、現在は5人です。年齢層は50代が多く、30代も1人います。中止をした理由は、情報機器の操作上の問題が多く、その次に多いのが患者さんが対面診療を希望したケースです。また、患者さんとの関係性が希薄になり自己中止したと推測される例もありました。
 

小野 先生

当院のオンライン診療枠はまだ余裕があるため、同システムによる受診人数を増やせば医師にとってはいわゆる外来診療時間の短縮、患者さんにとっては待ち時間の短縮につながると考えています。但し、人間関係を重視し対面診療を希望する患者さんも多く、合理性のみを優先しても患者さんには支持されないことに十分留意する必要があります。

オンライン診療を継続されている患者さんの多くは2年ほど経過しますが、病状変化の見逃しや緊急対応が必要になったこともなく、患者さんご自身のライフスタイルに合うようで好評です。

オンライン診療の時に工夫されている点はありますか?

大事にしていることは患者さんを絶対に待たせない点で、そのためにも患者さん側に予約時間を守っていただくなど時間の管理を徹底しています。

そのほか、オンライン診療でできることと、対面診療でできることは異なりますので、そこは分けて考えています。オンライン診療では患者さんから話を十分に聞いて、病状に関する情報などを聞き取ることが大事です。それを対面診療時に活かしていますので効率が上がったと感じています。

新型コロナウイルス感染症の影響が続いていますが、どう対応されていますか?

当院では、熱・風邪の症状を有する患者さんは施設内に入れない方針にしています。2020年4月に事務連絡「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」が発出されてから、感染が疑われる場合はオンライン診療へ誘導しています。オンライン診療後どうしても対面診療が必要な場合のみ外来診察時間の最後にまとめて診るようにしています。これによりかかりつけの患者さんが安心して対面診療ができる時間的・空間的な隔離が可能になりました。

オンライン診療を行っていく上で、今後の課題はありますか?

小野 先生

当院は現在、午前と午後の外来診療の間にオンライン診療を行っていますが、オンライン診療を増やすためには、平日の夕方などに診療枠を設けることが必要になります。しかし医師一人では時間的な限界があるため、それが可能か否かが課題の一つです。

一方で、慢性疾患の場合、基準を満たせば希望する患者さん全員がオンライン診療を受けられますが、診療所経営を考えると非現実的です。オンライン診療と対面診療との間には保険点数に大きな開きがあるからです。

また、これまでのオンライン診療の経験から、オンライン診療におけるエビデンスを有する診療方法を確立することが必要と考えています。

最後に、オンライン診療を検討している先生方にメッセージをお願いします。

オンライン診療は特別な診療ではなく、対面診療と同じように診察することが大事です。そのためには患者さんとの関係性が十分に確立されていることが必須です。また、患者さんの立場で考えると、どのような状況下でも診察を受けられる病院が安全でしょう。オンライン診療の導入によって他の施設との差別化を図る上で、対面診療、オンライン診療、訪問診療を提供できる施設に早く移行することが求められるのではないでしょうか。

小野 先生

小野 卓哉 先生

医療法人社団 桃医会 小野内科診療所 理事長・院長
平成4年日本医科大学医学部卒業。平成11年同大学大学院医学科卒業。医学博士。
日本内科学会総合内科専門医。日本循環器学会専門医。日本医師会認定産業医。
日本禁煙学会認定指導医。米国内科学会日本支部会員。

施設データ
医療法人社団 桃医会 小野内科診療所
〒136-0072 東京都江東区大島1-33-15
スタッフ数 医師1名、非常勤医師2名

※本記事に掲載している情報や所属、役職等は取材時点のものです。

取材日:2020年6月8日

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